と言えばよかったのだ

 不意に 逞しい腕が私を屋根に引っ張りあげた。
 何がどうなったのか知らないが、 助かったらしい。
 持っていた植木鉢を投げ捨て、 空走車の屋根にしがみついた。
 私の上に 逞しい体が覆いかぶさって支えてくれている電機工程

 しがみつきながら反省した。
 断ればよかった。
 落ち着いて、 地上に降りましょう と言えばよかったのだ。
 だって、 追いかけてきたのは凶悪犯ではなく マスコミなのだ。
 追いつかれても困ることなんか 何一つ無い。 少なくとも 命の危険は無い。
 どうして乗せられたんだろう。
 んっ?  『ユン』て呼ばれたんだ。
 何故 先生が知っているのだろう。
 空走車は 私を屋根に乗せたまま、 止まる気配も無く飛び続ける。
 反省している場合ではない皮秒 激光

 その後の記憶は 少し曖昧だ。
 気づいたときには、 胡枇芸の敷地に着陸していた。
 私を屋根に乗せたまま 広い胡枇の町を横断したみたいだ。
 普通しないだろう。

 呆然としていると扉が開き、 のんきに話をしながら二人が降りてきた。
「何故、 植木鉢がぶつかっちゃったのかしら」
「いろいろ不幸な偶然が重なった結果でしょう。
 集合住宅にぶつかりそうになって、 回避設定が作動した瞬間に、
 あまりに近くで 植木鉢を取り落とした迷惑な人間がいたらしい。
 回避機構の改善を要請しなくては」
 迷惑なのはクリちゃんだろう、 と突っ込む気力も失せて 屋根に転がっていたら、
 支えてくれていた重さが消え、 乱暴に引き降ろされて我に返った。

「またおまえか。 命の恩人に 礼くらい言ったらどうだ」
 憮然とした声は、 あの男だった激光 脫毛