二つに分裂しそうにな

「もちろんです。 ここを何処だと思っているのですか。
 権力を手に入れたがっている方など 珍しくもなんともありませんことよ。
 むしろ 独創性に欠けると言っても良いくらいに ありふれていますわよ臍帶血儲存
 四年前にだって、 朝廷が 真っ二つに分裂しそうになったではありませんか」

 先の帝が 北山に館を建てる計画が漏れ、 退位しようとしていることが明るみに出た時、
 次の帝をめぐって 朝廷の意見が割れた。
 当時 東宮だった今上帝は、
 凡庸を絵にかいたような 見ばえのしないぼんやりさんだったのに引き換え收毛孔
 第二皇子の石切(いわきり)親王は 聡明で力強く、
 文武共に秀(ひい)でていると認められており、
 何より 闊達(かったつ)で 堂々とした見ばえの良さから 官民ともに人気があったから、
 東宮を廃して 石切親王を帝に立てようとする一派が動き出したのだ。
 東宮派と石切派が対立して、 不安な空気が漂った。

 その時、 派閥の争いから起こりうる事件を 未然に防ぐ為もあって、
 花澄が 内裏に潜入したのだ靈恩教會
 内裏には、 高官や有力貴族の妻や縁者が女官に上がっている。
 ある種、 裏情報の宝庫と言って良い。
 石動原一家が惨殺されたのは、 まさにそんな折だった。